飽食と美食、予防には逆向き

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 日本人の死亡原因で最も多い「がん」。その中でも、食の欧米化や日常のストレスを一番受けやすいといわれる大腸がんは、肺がんなどと並んで増加傾向にあります。肺がんは、健康増進法に基づいて禁煙対策を中心に患者数の増加を食い止める取り組みがなされていますが、大腸がんはどうでしょう?

 確かに、がん対策基本法の制定やいわゆる「メタボ検診」の導入で、食生活の見直しや肥満の解消、運動習慣の重要性が周知されつつありますが、ストレスのかからない環境作りは難しいですね。

 また、日ごろテレビを見ていても美食や過食を追求する番組のいかに多いことか。視聴者、言い換えれば国民が美食を求めているわけで、これは大腸がん予防とは逆向きの方向です。飽食の時代にあって、大腸がんを予防する環境作りは大変難しいと言わざるをえません。

 そこで、大腸がんの克服には、定期的な検診が重要となります。できるだけ早期の段階で大腸がんを発見するためです。

 現在は「便潜血反応」といって、便を検査するだけで検診を受けることができます。通常2日間の便を検査します。全く痛くも痒(かゆ)くもありません。検診で異常がわかると、大腸内視鏡やお尻(肛門(こうもん))からバリウムを注入する検査(注腸造影検査)を行います。65%の人には異常ありません。30%にがん以外のポリープ、5%程度にがんが見つかります。

 この便潜血検査による検診では、早期がんの50%程度、進行がんの80%程度の診断が可能といわれています。残念ながら100%ではありません。しかしながら、検診で発見された人の50%以上は早期がんで、内視鏡治療や腹腔(ふくくう)鏡治療など負担の少ない方法で治療できる割合が増加します。

 青森県の大腸がん死亡率は全国平均と比べて男性1・5倍、女性1・2倍と高率です。この4月の厚生労働省の発表で、青森県の大腸がんの死亡率が男女ともに全国第一位と報道されました。

 ひとつの理由があります。進行がんで発見される割合が多いのです。青森県全体の詳細な統計はありませんが、私どもの施設を含めた県内の主要施設の状況をみると、進行がんの割合は全国平均より明らかに高いのです。大腸がんは他のがんに比べて、治療成績が良好です。早期のがんは内視鏡治療や手術で完治することができます。みなさん、検診を受けましょう。

 さて、大腸がんでは「便に血液がつく」「便が細くなる」などの特徴的な症状に加え、「なんとなく不快感がある」「ときどき腹痛がある」「下痢」「便秘」など、大腸がんでなくとも時々経験する症状で発症することがあります。

 症状が出てから診断された大腸がんの場合、早期がんの占める割合は10~20%と低くなります。体調の変化に気づいた際は、あまり我慢せずに病院を受診する必要があります。

 大腸がんと診断されますと、がんの進み具合(病期、ステージ)を調べます。内視鏡検査や注腸造影検査に加えて、主にCT検査を加えて、リンパ節や肝臓、肺などに転移がないかどうかを検査します。この診断に基づいて最も適切な治療法を選択します。

 内視鏡検査で早期がんが疑われる場合には、まず内視鏡でがんを取り除きます。大きさが2センチ未満で粘膜内にがんがとどまる場合や、粘膜下層に少しだけ入り込んだステージI(1)の場合には内視鏡治療だけで十分です。

 それ以外の場合には手術治療が標準治療(最良の治療方法)です。がんを中心に周りの大腸とリンパ節を切除します。

 がんがすでに大腸から遠く離れた場所に転移している場合をステージ4(4)といいます。大腸がんと転移したがんの両方とも安全に取りきれるならば、両方とも手術で切り取ります。転移巣をとりきれない場合には、大腸がんのみを取り除き、残った転移巣には抗がん剤治療や放射線療法を行います。

 大腸がんは肝臓に好んで転移しますが、たとえ転移しても、切除によって3割の患者さんはがんを克服できると言われています。

 抗がん剤治療もこの数年で飛躍的に進歩しています。「分子標的治療薬」という新しい薬も導入されました。以前は転移があれば「手遅れ」とされた時代もありましたが、今はそうではありません。医学・医療は確実に進歩しています。ステージ4と診断されても、あきらめずに治療することが大切です。

 さて、大腸がんのうち、直腸がんの手術治療には大変微妙な問題があります。肛門を含めて切除して人工肛門を作るか、肛門を温存するか(残すか)という問題です。特に肛門の出口に近いところにできたがんでは、施設によって肛門を温存するかどうかの判断が分かれます。

 肛門を温存する方法は、技術的にも難しいですし、がんの顕微鏡検査の内容やがんの広がり方に応じて切除範囲を調整する必要があります。人工肛門を作るかどうかは、術後の生活内容に大きく影響します。治療方針を決める際には、セカンドオピニオンなどを利用して、十分納得の上で手術方法を決めていただきたいと思います。

(弘前大学大学院消化器外科学講座 准教授 袴田健一、助教 村田暁彦)

(朝日新聞 2008年6月6日)

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このページは、egaoが2008年7月19日 23:27に書いたブログ記事です。

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