たばこを吸う人にとっては、住みにくい世の中になったようだ。病院や学校は言うに及ばず、レストラン、居酒屋、場所によっては街路でさえ禁煙のマークが見られる。
厚生労働省の調べによると、平成17年の日本人成人男性の喫煙率は4割を切ったらしい。成人男性の8割以上が吸っていた昭和40年代に比べれば、隔世の感がある。最近の健康志向の
たばこの健康に対する悪影響は言うまでもない。禁煙しなくてはと、「分かっちゃいるけど、やめられない」という人が多いのも事実である。かくいう私も格好つけて、一時期吸っていた記憶がある。
ところが、意外と知られていないのが、歯を含めた口内の健康に対する影響である。私が歯や歯茎の着色、歯石の付き具合をみて、「たばこ、お吸いですね?」と言うと、むしろびっくりされてしまう。治療いすから起き上がり、「どうして分かるんですか? たばこって歯と関係あるんですか?」などと質問される。
歯そのものに直接影響することはないにしても、何しろたばこの煙が最初に触れるのが口の中である。ニコチン、タールをはじめとして200種以上の有害物質が含まれている煙が、高温で襲いかかってくるのである。影響がない方がおかしい。
考えられている害を順番に挙げてみよう。まずは誰でも分かるヤニ臭さ、つまり口臭である。口臭に対する関心が深まり、気にする人も多いが、残念ながらたばこをやめない限り治らない。次は歯茎の色が黒ずんでしまうことである。ホワイトニングやセラミックを用いて歯の色を白くしても、歯茎が黒いと、どうしても健康には見えない。
たばこが影響する歯科疾患で、最大にして最悪のものは歯周病である。なにしろ、細菌に対する免疫反応をたばこが抑制してしまうため、歯周病にかかりやすいし、炎症も容易には治まらない。難治性歯周炎にかかっている人のほとんどが喫煙者である。
歯と歯茎の境目にある細菌のすみかとなるポケットが深くなっている率が高く、しかも歯石が多く付いている。それがさらに進展すると、歯を支えている骨が溶けてなくなり、やがては歯を失ってしまう。歯周病で抜けたところに、いま
もちろん、
(2008年8月1日 読売新聞 ・ 歯科医 つれづれ記より)

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